第5章 麦わら帽子とヒマワリとカメラ
男が所持している一番若いであろう和泉守兼定だって、優に三百年は生きているのだ
それより前からあった短刀たちは、さらにその何倍も生きているのだろう。
しかし姿形がああだからか、短刀たちはその見た目に比例して精神も幼い(もちろん、そうでないものもいる)。
だから男はどうしたって、弟や或いは子供のように思ってしまうのだ。
「そんなものなのか」
「そんなもんだよ」
男はそう言ってから、再びカメラを手に、撮ったばかりの一枚の写真を見つめる。
青い空に白い雲がところどころ浮いており、その下には燦々と咲くヒマワリの大群。
その中心で笑うのは、麦わら帽子をかぶった鶴丸国永と小夜左文字、そして和泉守兼定だ。
それは一枚の絵のようでもあり、男は大層気に入った。
大倶利伽羅も行けばいいのにと言えば、馴れ合うのは好きじゃないと返ってくる。
予想していた言葉と同じ言葉を返され、男はにんまりと笑った。
その笑みは何かを企んでいるようないたずらっ子のそれで、大倶利伽羅は嫌な予感に口を引き攣らせる。