第5章 麦わら帽子とヒマワリとカメラ
男は両手で顔を覆った。
「つるかわ」
んんんと悶える男を横目に、大倶利伽羅はため息を吐く。
この男が鶴丸国永のことを好いていることは、随分と前から知っている。
「つるかわいい天使。麦わら帽子ちょう似合う。天使かなうん天使だな天使だったな。いや俺は知ってたけど!」
「ちょっとは落ち着け」
ぽわんと目にハートを浮かべ頬を染める男に、大倶利伽羅は救いようがないと現実逃避をしたくなる。
あれのどこが天使だ、とはこの本丸の刀剣たちの言い分だ。
男も確かに鶴丸国永の悪戯の被害者であるのに、どうして天使だと言うのか他のものには理解できない。
いや、確かに見た目だけならば頷けるのだが、いかんせん中身がそれこそ驚くほどあっていない。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
大倶利伽羅の横ではピントを合わせる音がしては、シャッター音が続く。
男は数枚写真を撮った後、それを眺めては幸せそうに微笑んだ。
「楽しいか、それ」
思わず大倶利伽羅が聞くと、男はゆるっとだらしない笑みを浮かべたまま答えた。
「楽しい、ていうか、幸せっていうか…。子の成長を見守る親って、こんな気持ちなのかなあみたいな。あ、そりゃあお前たちからすれば俺のほうがよっぽど子供なんだろうけど」