第1章 一周年!そしてーー
寝殿造りの様な屋敷。日本庭園の様に池があり、赤い橋が架けられ離れがある。この様な景色は今(2016年)で見るには、京都や昔の面影を残す所でしか見れないだろう。
そんな屋敷の一部屋、大広間にウチはいた。
「ほ~ら!アンタも飲みなよ~!!」
「ほれほれ!!」
だが、最悪な事によく悪酔いする酔っ払い二振りに両側からがっちりホールドされていた。
ウチに差し出される日本酒が入ったおちょこ。ちょっ!ウチ、まだ未成年なんですけど!?
「次郎さんに日本号、コイツ未成年だよ。お酒を進めない。只でさえ匂いだけで酔う奴に飲ませても美味しくないし、面倒くさいから。」
大きな炬燵机の短い辺の所にいたウチ。ウチと垂直になるように右側に座っている加州清光が多分、助け舟を出してくれた。
自分の意志で選んだ刀である彼は<過去>も<今>も、ウチに対して辛辣すぎる。
「次郎さん、日本号さん、ありがたいけどお酒は飲めないし、嫌いだからさ…。」
「そうだったね~。無理強いしてごめんよ。じゃあ、これならどう?」
「お~い長谷部、嬢ちゃんが飲めねーからお前が付き合え!」
長い机で、ウチから離れた所にいるへし切長谷部さんに日本号さんは絡みに行った。
次郎太刀さんは酔いが回っている赤い顔で、橙色の液体が入ったペットボトルを差し出す。中身はオレンジジュース。短刀ちゃんや、酒が苦手な刀がいるからジュースやお茶が用意されていた。
流れで絡まれた長谷部さんの声が遠くから結構聞こえる。ご愁傷様です。同じ主さんの所にいたよしみだから、結構な頻度で絡まれている。
「有難う!」
コップ頂だいと言われて、コップを次郎さんに渡すとそこに注がれる。お礼を言うと嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
それが終わった後、次郎さんは兄弟である太郎太刀さんの所へ行った。手には次郎用と書かれていたお酒の樽に入っていたお酒を携えて。
「全然、進んでないじゃん!…料理、不味かった?」
全く箸が進んでいないウチを心配してか、加州の向かい側に座っている大和守安定君が覗き込んで見てきた。
「不味くなんて…凄く美味しいよ!」
めっちゃ美味しいんだけど…コレは一体どういう事なのだろう。
目の前に豪勢な料理の数々。まるで、宴を開いているみたいだ…。
ウチがこんな状況になったのは、ほんの数十分前の事だった。