第3章 姉
その日、はアルスラーンに呼ばれ勉学を教えていた。
『殿下は覚えが、早ようございますね。私などが教えるよりも王宮の者で十分ではございませんか?』
「まぁ、その…以外だと筆が進まなくてな」
『ふふっ、私だと進むのですか?』
普段、おっとりとしただが勉学などに関してはナルサス同様に頭がきれ、教え方がうまかった。アルスラーンは、勉学の先生になってくれ、とに度々頼んでいる。だが、女性が教える事を良く思わない輩もいた。アルスラーンに余計な敵が出来るといけない、とナルサスと話し合った結果、王宮の者が休み等の時に限ってと言う事になった。
『殿下は、勉学はお嫌いですか?』
「嫌いではない。歴史や知略を学んだりするは楽しい。だが、いつも余計な話をしてくれないのだ。息が詰まってしまう」
『そうですか。ですが、王としては大事なことですので頑張りましょう』
「うむ。こうしてが教えにきてくれると本当に楽しく、嬉しいのだ」
二人で微笑んで、また筆を動かし始めた。
そうして、時間が過ぎ陽が傾いてきた頃になり、帰る前に二人でお茶を飲んでいるとアルスラーンがこんな事を言った。
「は、兄弟はいるのか?」
『兄がおりましたが、亡くなりました』
「す、すまない」
『大丈夫です。昔の事ですから、もう気にしておりません』
謝ってきたアルスラーンに、は『王となる方は、簡単に頭を垂れてはなりません』と、たしなめた。
「は、兄との記憶はあるのか?」
『淡い記憶しかございません。ですが、とても優しい兄でしたわ。いつも私に笑いかけて下さる方で、剣術の稽古をよくしていたのは覚えております』