第8章 苦手
『ラジェンドラ様。本日は、いかがなされましたか?』
「それがなぁ、殿。私は初めて聞いたのだ。ナルサス卿と殿が祝言をあげていたことを」
『そうでごさいましたか。それは、大変失礼をいたしました。内々での事でしたので、国外には通知いたしませんでしたの』
「内々とは…私と殿の仲では、ありませんか?」
簡単な話。ラジェンドラは、自分の妃にしたかったのだ。しかし、は知らず知らずにラジェンドラに思わせ振りをしていたのだ。
「ラジェンドラ殿、本当に失礼をいたした。てっきり、私との仲などご存知かと思いました」
ニッコリと腹立たしい笑顔をラジェンドラに見せた。
「全く知らなかった。まさか、恋仲だったとは」
それに負けじと、ラジェンドラも返す。
「ナルサス様、お茶をお持ちしました」
そこへ、エラムがお茶とお茶請けを持ってきた。
『エラム、ありがとう。ささ、ラジェンドラ様もナルサス様も、座ってお話なさって下さい』
二人の腹黒い笑顔とは違い、眩しく感じるほどの純粋な笑顔をむけられた。
「ぜひぜひ、殿の隣に」
「そこは、私の席ですが」
「私は客。好きな席に座っても宜しいではありませんか?」
「家の主の席だと」
『ならば、私が他に移りますゆえ、どうぞ?』
「「……」」
すると、いつもエラムが座る隣に腰を下ろした。
『エラムも座りなさい。御二人は、あそこの席が良いみたいなので』
「は、はぁ…」
こうして、見たくもない男二人の図柄が出来上がったのであった。
(エラム、今度来たら)(わかっております)
(帰っていただ(け)きます)
アトガキ
見るからに、お互いが苦手そうですよね。