第6章 雨
が王宮に入ってから、すぐに目的の人を見つけた。
『ナルサス様、お帰りなさいませ』
すると、が来てくれた事に嬉しいそうである。
「うむ、ちょうど帰りだ」
『良うございました。夕暮れ前から雨が降り出しましたので、傘を持って参りました』
「助かった、濡れ鼠で帰らねばならぬかと思ったが…おや、一本だけか?」
『実は、シャプール様にお貸ししました。困っているご様子でしたので…申し訳ありません』
頭を下げているに対し、ナルサスは特段怒っている様子もない。
「いいや、困っているなら構わんさ。それに、たまにはこうして雨の日に二人で帰るのも良かろう」
その言葉に、は破顔してナルサスの左隣に立った。
『ありがとうございます、ナルサス様』
すると、ナルサスが腕を出してくれた。は、何故?と、ナルサスを見た。
「ん?夫婦なのだ、腕を組んでも良かろう?」
『~っ!照れもせずに、言えますね。そんなくさい台詞』
「そんな事はないさ。ここで、組んでくれなければ俺の自惚れだったと思わざるを得ないがな」
目線を反らすことなく、に問いかける。その視線には、恥ずかしくて腕に抱きつくように顔を隠した。
『…ナ、ナルサス様は意地悪です。私は、こんなにナルサス様を思っているのを知っているのに…』
二人が寄り添って歩くのが、王宮の侍女達の間では絵に描いたようだと話題になったそうだ。
後日…
(ナルサス殿)(これはこれは、シャプール殿。先日は世話になりましたな)(え?いや、私の方が世話に…)(妻と仲良く帰る事が出来ました)(…そ、そうか)
アトガキ
スミマセン、ただの惚気です。
最近、雨でしたので相合い傘をしたいだけでした(笑)