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大切な貴方(アルスラーン戦記)

第6章  雨 



「こんなに降るとは…」


シャプールは、王宮での仕事が終わり帰ろうかという矢先、雨に降られて困っていた。
走って帰るべきか、それとも待つべきか迷っている。雨が降ってる先から、誰かが傘を射し歩いてくる。


『あら?シャプール様ではありませんか?』


それは、ナルサスの妻だった。


『もしや、お困りですか?』

「まぁ…急に降られたのでな。走って帰ろうか、迷っておるのだ」

『でしたら、これをお使い下さい』


すると、傘を一本差し出してくれた。よく見ると、は射している以外にもう一本持っている。


『あぁ、これはナルサス様のものです』

「いやいや、主人が使う物を俺が使っては…」

『大丈夫ですわ。もう一本ありますもの』

「しかし…」


借りるべきか、借りぬべきか…
だが、まだ止みそうにないため


「では、貸して頂こう。ナルサス殿と殿には、後日お礼をしに伺おう」

『そんな、お気になさらないで下さい。困った時はお互い様です』


おっとりした顔でニッコリと微笑んで、返事をしてくれた。


『お気をつけて、お帰りください』


そう言って、王宮の中へ入って行った。


 
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