第5章 娘のように
昼間の王宮での勤務が終わり夕暮れ時、ナルサス、、エラムはダリューンとヴァフリーズに招かれ夕食を共にしていた。
「私も良かったのですか?」
『エラムは私達の家族だもの、一緒に食事をするのは当たり前ですよ』
気まずそうにエラムは、一緒の席に座るのを戸惑っている。それは、自分が解放奴隷の子だという事が原因である。しかし、ナルサス、を始め他の二人もそれは気にしてはいなかった。
「エラムは、我々と食事を一緒にするのは嫌なのか?」
「そんな事はございません!」
「家では、二人と食事をしておるのだろう?」
ダリューンとヴァフリーズは、エラムが一緒に食事をするのは、さも当たり前のように質問をした。
「ヴァフリーズ殿もこうおっしゃっておるのだ。よいではないか、エラム」
「し、しかし…」
『エラムが一緒に食べないなら、私も頂きませんよ?』
「そ、そんな…様まで…」
強行手段と言わんばかりのの言葉に、エラムは席についた。そして、食事を始めるとヴァフリーズがに話しかけた。
「それにしても、殿にはかないませんな」
『そんな事はございませんわ、ヴァフリーズ様。私は、本当にエラムを家族だと思っております。それに、皆で食べた方が美味しゅうございます』
「エラムには、本当にいつも助けてもらっているからな」
「勿体ないお言葉です」
『もう少し、私にだけでも砕けた物言いをしてくれると嬉しいのだけれど?』
クスクスッと、が笑うとエラムは困ったように笑って見せた。
「私は、お二人のお世話ができるだけで幸せでございます。これ以上、幸せになってはバチが当たってしまいます」
こら、とエラムの頭を小突いた。
『幸せになるのに、バチなど当たりません。それなら、私は沢山のバチが当たってますよ。ナルサス様にダリューン様、ヴァフリーズ様、それからエラム。他にたくさんの人がいて私は幸せなのです。人は誰にでも幸せになる権利があるのだと、私は思いますよ』
ほう、とヴァフリーズはの話に聞き入っていた。