第1章 上~君編~
一瞬、和ちゃんの動きが止まった。
「…っ!ウソばっか言ってんじゃねぇよ。」
が、再び胸を乱暴に触り始めた。
「嘘…じゃない…よ…っあ…ん…本っ…当だよ」
「…!!!」
和ちゃんの動きが完全に止まった。
「和…ちゃん?」
「まだ、真ちゃんとなんもしてねぇのかよ?」
「うん…?この間初めて手ぇ繋いだ。」
「…っはは…。まじかよ。お前ら小学生かよ…」
和ちゃんはなんだか悲しそうに笑った後
私から手を離した。
「おい。これに懲りたらもう二度と他の男に簡単について行くんじゃねぇぞ。」
そういうと和ちゃんは立ち上がり自分の乱れた服を調えた。
「あ、勘違いすんなよ?お前が"真ちゃんのもの"だからちょっと手ぇ出してみたくなっただけだ。お前と俺はもう…昔の仲良しな幼馴染じゃねぇんだよ。男と女なんだよ。わかったか。…昔とは違うんだよな。」
そう和ちゃんはなんだか自分に言い聞かせるようにポツリと呟いて部屋を出て行った。
ふと窓の外を見ると雨が降っていた。
あぁ。またこの季節がやってくるのか。
雨ばかりで
暑苦しくて
私は服を着ると足早に和ちゃんの家出ようと
玄関へ向かった。
私の靴の横にビニール傘と雑な字で書かれたメモが置かれていた。
『雨降ってるから使え』
胸が張り裂けそうなぐらい痛んだ。
どうせならとことん突き放してほしかった。
私はその傘を使わず
雨の中を傘をささずに泣きながら帰った。