第10章 月の揺りかご/上杉謙信(夢主side)
どうして私は此処にいるんだろう?
見慣れない天井
見慣れない調度品
そして目の前にはすまなそうな顔をしている
佐助くんと複雑そうな顔をしている幸。
「愛香さん、本当に申し訳ない」
深々と頭を下げてくれる佐助くんに怒る気はないんだけど……
ただ、この状況を信長様に知ったら__
そう思うと怖くて仕方ない。
「あの……この事を信長様は……?」
「それは心配ない!……と、思う……」
思うって
頼りない幸の言葉に不安が残る。
「俺がガマンをすれば万事上手く行く筈!……だ」
?
いつもの幸らしくない歯切れの悪い言葉
それになんだか無理やり納得をしようとしているような?
「幸村がおとなしく信長の寵愛を受けていれば問題なかろう」
脇息に肘をかけ悠然とお酒を呑んでいるのは
謙信様。
多分、ううん。
絶対だよね?
謙信様のせいでこの状況になっているのは……
「誰のせいでこうなったのか分かってますか?!……まったくっ……」
恨めしそうに謙信様を睨み付ける幸の瞳からは涙が浮かんでいる。
いまいち状況がのみこめない私は、佐助くんに視線を移すと
「愛香さんが心配する事はないから
安心して。ただ……」
「ただ?」
「幸のケツが使い物にならなくなるだけだ。
愛香が気にやむ事など何もない」
「……っ!! あんたがソレを言うなっ!!
誰のせいでこうなったか分かるか?!」
謙信様に食ってかかる幸
……やっぱり話しが見えない