第9章 露天風呂
「早くしろ」
冗談……?
そんな事はない
信長様は冗談なんか言わない人だもの
背中を流すのは別に構わないんだけど、なにも用意していないから。
米ぬかの入った布袋を持ってきていない。
(この時代には石鹸がないから米ぬかを布に入れて身体を洗っているの。なかなかエコだよね)
「貴様、いつまでこの俺を待たせる気だ?」
「洗う道具を持ってきてないんですけど……」
「貴様の手は何のためについてる?」
「手……?」
マジマジと自分の手を見つめてしまう。
手……って?
「あ……!!」
信長様の言っている意味がわかって、頬が一気に熱くなっていく
私の手で洗えと__
そう言っているんだわ……
「理解できたならさっさと来い」
有無を言わせない響きに逆らえるわけもなく
私は、長襦袢一枚だけ身にまとい信長様の元に歩いていく
「……貴様は阿呆か?」
心底呆れたような言葉と長襦袢を身にまとっている私への視線
うっ……
これもまた、分かってしまう
でも、恥ずかしいんですっ
「邪魔だ……」
「あっ!」
私の腕を引き寄せ、いとも簡単に長襦袢を剥ぎ取られ一糸纏わぬ姿にされてしまい……
空気は冷たいんだけど熱を帯びた私の素肌には心地良い
(どれだけ熱くなっているの?
私ったら……)