第9章 露天風呂
山奥の小さな川
私の目の前にはごく普通の浅瀬の川が流れている。
でもちょっとだけ違うのは岸辺から白い湯気
川のせせらぎと白い湯煙
なんともいえないアンバランスな組み合わせ
それが川湯温泉__
一生に一度でいいから体験してみたかったんだけど、まさか戦国時代で体験出来るなんて
夢みたい
突然、信長様が「湯治に出掛ける。ついて来い」と言い放ち、取る物も取らずに馬に乗せられて走ること数刻
山の奥深くにその温泉があった。
「どうして此処に?」
「いちど貴様を連れて来たいと思ったからだ。
俺が見て良いと思った事は貴様にも体験させてやる」
「ふふ……ありがとうございます」
この方なりの気の使い方が嬉しくなって、笑みがこぼれてしまう。言葉や態度は横柄だけど、それは信長様なりの愛情表現って分かっているから
「そんな事より」
「はい?」
「いつまでそこに突っ立っているつもりだ?」
「え?」
信長様はさっさと湯に浸かっている。
私もせっかくだから湯に浸かりたいんだけど……
もうそろそろ太陽が沈むといっても
まだ、明るいし
流石に裸になるのには抵抗があるっていうか
(恥ずかしい……)
「早く来て俺の身体を洗え」
「え……?」