第8章 「さん」付けの代償/徳川家康(家康side)
「家康様、お願いしたい事が……」
「三成のお願い事なんか聞く気はないよ。
……出ていってくれる?」
安土城の俺の部屋に突如としてやってきた三成。
極力、俺は三成と言葉を交わしたくないから
素っ気なく返事をする。
そんな俺の態度を見て知っているはずなのに
三成は、勝手に話を進めている。
要するに、秀吉さんが腹痛をおこしているので、薬を作って欲しい__
面倒くさい……
でも、子犬のように縋る目つきの三成を見るのはもっとイヤな俺は薬を作る事にした。
薬草を保管している部屋に行こうとしたら
ん?
台所から話し声?
「そうか?__でも、お前の耳たぶを触りたくなったからな」
覗いてみると愛香と政宗さん
「ほら、触って確認してみろよ」
愛香の手を取り、耳たぶを触らせようとする政宗さんの姿。
瞬時に2人が何をやっているのか__
分かったけど、面白くない。
(料理をしているだけでしょ)
「政宗の耳たぶなんて触りませんよ!」
「なーんだ……じゃあ、どこを触りたいんだ?」
くすくすと笑いながら「どこも触りませんっ」と反論する愛香と、声をあげて笑いだす政宗さん。
……気分が悪い
「2人……仲良しだね」
「家康さん?!」
家康さん?
政宗さんの事は「政宗」って呼ぶのに
俺の事は「さん」付けなわけ?
なにそれ?
イライラする
「愛香に団子作りを教えてた」
そんなの見れば分かるでしょ
「ま、俺には関係ないけど……」
「い、家康さんっ!」
また「さん」付けなわけ?
愛香、分かって言ってるのかな?
「……なに?」
自分でも分かるくらい、素っ気なく
冷たい声