第46章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/謙信
縁側で梅干しを肴にしてお酒を吞んでいるのは謙信様。
私は極力、足音をたてないように気配を消しながら近づいていく。
謙信様まで後3歩。
手汗のせいで竹刀が滑りそうになるからぎゅっと力を込めて握りしめる。
大きく振りかぶり、いざ!!
勝負!!!!
竹刀が宙をきり謙信様の頭へにめがけ振り落とされる筈が……
「まだまだのようだな」
「くっ……!」
悔しくて唇を噛み締める私。謙信様はというと、私が強く握りしめていた竹刀を左手に持ち、右手で私の腰を抱いていた。
「唇を噛み締めるほど悔しいのか?」
細長い指が下唇をゆっくりとなぞっていくだけで、私は謙信様から熱を与えられてしまう。
惚けてしまいそうになるのを寸でのところで堪えて、真っ直ぐと謙信様を見据えて頷く。
「謙信様との勝負に勝たなくては、私の願いが叶いませんから」
「そうだったな」
ふっと息を抜くように微笑む謙信様
(それさえも綺麗で見惚れてしまうなんて……どれだけ私は心を奪われてしまうの?)
でも、それくらい私は謙信様の事が好きで、好きだからこそいつでも傍にいたいと思っている。
だから、私は謙信様との勝負に負けるわけにはいかない。
私の願いとは───
戦場に私を連れて行って
貴方と離れたくないの。