第38章 俺様に薬を飲ませるための代償/織田信長
いつものように広間で軍議をしているので、みんなにお茶を淹れていた私。
「ん?」
どことなく違和感を感じる。
違和感を感じるのは信長様
いつものようにゆるりと脇息にもたれ、みんなの話しに耳を傾けているんだけど
何だろう?
この違和感
違和感の正体が分からない私は、信長様の様子を伺うんだけど……
いつもとどこが違うってはっきりと分からない。
首を傾げていると
「なんだ愛香……気付いたのか?」
私の隣りに座り、光秀さんが小声で話しかけてきた。
「光秀さんも?」
「ああ……御館様は……」
「御館様は?」
「風邪をひいているな」
……風邪?!
信長様が?!
にわかに信じられないんだけど
(信長様だって人間なんだから風邪くらいひくとは思うんだけど、イメージ的に風邪をひくイメージじゃないような?)
でも、風邪をひいていると思って信長様を見ていれば納得できる
ちょっと気怠い雰囲気
潤んでいる瞳にうっすらと染まる頬
時折、掠れる声
(風邪ってわからなかったら、ただ色気を振りまいてるとしか思えないんだけど)
「愛香……」
「はい?」
「幸いな事に秀吉はまだ気づいてはいない」
「あ……言われてみれば」
忠犬のような秀吉さんが気付いていたら、大騒ぎになって軍議どころじゃなくなるよね。
「そこで愛香に重大な任務を任せたい」
「任務?」