第37章 風邪の妙薬/真田幸村
春が近付くにつれ、暖かい日と寒い日が続くそんなある日。
愛香の元に困り果てた顔をした佐助が訪ねてきた。といっても彼の出入り口は天井であるが
「どうしたの?」
「実は幸村が……」
「幸村?」
(私が信長様にお世話になっているから幸村とは敵同士という関係になってしまっている。
だから、簡単に逢う事が出来ない。
そんな私たちのことを不憫に思って何かと私と幸村との橋渡しをしてくれているのが佐助くん)
「ちょっと風邪をこじらせて寝込んでいるんだよ」
「大丈夫なの?」
不安そうに佐助を見つめる愛香に若干、笑顔をひきつらせつつ
「気合いで治すって言って薬を飲もうとしないから困ってるんだ」
(もう、幸村らしい)
駄々をこねる幸村を想像すると自然に頬が緩んでしまう。
「そこで愛香さんにお願いなんだけど」
「なぁに?」
懐から何ともいえない毒々しい色をした丸薬を取り出し、愛香の目の前に差し出す。
「この薬を幸村に飲ませてやってほしいんだ」
「ずいぶんと……凄い色だよね」
(佐助くんには悪いけど幸村じゃなくても飲みたくないかも)
「あ……愛香さんも見た目でダメかな?」
「ん……まあ……」
「でも! この薬の効能は保証出来るよ!ちゃんと家康さんから教わったから」
得意気に話す佐助
家康から教わったものなら大丈夫かと安心をして愛香は受け取った。