第29章 本気で惚れてるからこそ/豊臣秀吉(秀吉side)
「はぁー……参ったな」
文机にある書簡の内容が一向に頭に入って来ない。
考えるのは愛香の事ばかり。
「……どうしたもんだか」
頭を搔きむしるが、それで気持ちが落ち着くわけもなく__
「はぁー……」
出るのは溜息ばかり。
実は最近、少しばかりの悩みがある。
まあ、そのせいもあって眠れないんだが……
「秀吉、少し邪魔をするぞ」
俺の返事を待たずにずかずかと部屋に入ってくる光秀。相変わらず読めない笑みをしているな
「なんだ?」
「お前にしては珍しい失態だな」
「はあ?」
俺の目の前に突きつけられた書状
それは次の戦に備えての軍備を手配する記述がしてあるんだが
「どこが間違ってるんだ?」
「此処だ」
光秀が指さした場所に書いてあるのをよく見ると
「あ……米と馬を間違えてるな」
「どうした?……らしくないぞ」
小馬鹿にする笑い顔に多少のムカつきはあるが、自分の失敗だから仕方ない。
「夜の営みが激しくて睡眠不足か?」
「るせー……そんなんじゃねぇよ」
そうだ
愛香とはそんな間柄じゃない。
いわゆる清い関係っていうやつだ。