第20章 ワインのお味は?/真田幸村(幸村side)
市での行商を終えて間借りしている庵に近づくと
「ん?」
人の気配がする。
誰だ?
知らねーヤツなら即座に叩き斬ってやるつもりで鞘に手をかけ、中を覗くと
「ん? 愛香?」
「幸村!」
満面の笑みで俺を出迎えるてくれる愛香。
今日、会う約束なんかしてたっけか?
「なんか用事でもあるのか?」
久しぶりに会う愛香に心臓がドキドキと音をたてる。あまりにもデカイ音だから愛香に聞こえちまうような気がしてつい、ぶっきらぼうに答えちまう。
そんな俺の言い方に一瞬淋しそうな顔をするけど、すぐに笑顔になる愛香。
「なに笑ってるんだよ」
「ふふっ……なんでもないよ」
「変なヤツだな」
愛香はいつも、コロコロと表情をかえる。
なんで、そんなに表情が変わるのか俺にはわからねー
でも、そんな愛香を見ていて飽きないし
可愛いと思っている。
それにしても
「なあ……その大事そうに抱えてるのはなんだ?」
「あ!! 大事な事を忘れてたよ」
いそいそと俺の前に座ると
「じゃあーん!!」
ん?
瓶?
中身はなんだ?