第25章 行ってらっしゃい
だが、私にはできるのだ。
彼らの選手生命を絶つことくらい、容易いこと。
大ちゃんは肘、真ちゃんは手首と膝、あっくんは腰と膝、黄瀬は足首、テツ君は手首、征十郎は肩…。
誰がどの部位を痛めやすいなど、わかりきっている。
「(彼らを生かすも、殺すも…私次第…)」
そんなことをすれば、もうここにはいられなくなる…そんなことくらいは考えなくともわかる。
でも…そうすれば、彼らの考えも変わるんじゃないの…?
私は、徐にマネージャー道具の中から、使い古されたテーピングの本を取り出した。
「(ここにいられなくなったとしても…それでも私は…)」
もしも、それで彼らを元に戻すことができるんだとすれば、私は迷わずその方法を…。
「藍川さん」
不意に名前を呼ばれ、私はハッとした。