第21章 もう知らない
「征十郎の馬鹿っっ!教えてくれてもいいじゃない!私がどれだけ怖い思いしたと思ってるのよ!」
「華澄が怖くない、と言ったんだろ」
「そこは察しなさいよ、馬鹿っ!信じられないわっ!あんたそれでも本当に人間なの?!」
「おい、お前ら…その辺にして戻るぞ」
修ちゃんに止められて、征十郎は私を少し睨んだ後で、ひとりでずんずんと戻って行ってしまった。
一方、私は色々な感情が混ざって複雑な気持ちになり、また泣き出してしまったので、修ちゃんに抱きかかえてもらって戻った。
「何ー?藍ちん、泣いてんのー?誰に泣かされたのー?」
「赤司はひとりで戻ってきたのだが…大丈夫だったのか?」
戻ると、大ちゃんと黄瀬は誰よりもボロボロのボコボコにされており、魂が抜けていた。
あっくんや真ちゃんなど他の皆はそうでもなさそうだが、さっちゃんは怖かったのか、テツ君にピットリくっついて離れず、テツ君はそんなさっちゃんの頭を優しく撫でていた。
そして、私を悉く置いて行き怖がっているのも全無視した征十郎は、先程とってきた本を月明りで読んでいた。
「…ほら、もう降りろ」
「嫌」
「ったく…」
修ちゃんに降りるように言われるも、私は泣いた顔を見られたくないのと、征十郎に苛立っているのと、怖かったので、修ちゃんの首に抱き付いて顔を隠した。
そんな私を皆は心配そうに見るが、それどころではない。
「征十郎の、馬鹿…」