第5章 「怖い」と感じた
そのあと、外が少し騒がしくなり、きっとみっちゃんたちがまた恋バナでもしてるんだろう、と思った。
とりあえず、部員のケア処置も片づけも一通り終わったし、部員が全員帰ったら戸締りだけでこちらは終了だ。
さっちゃんたちも終わったかな、と体育館のすぐそこにいるであろう彼女たちに声をかけるべく、外に出ようとした。
「でも付き合ってはいないんでしょう?」
みっちゃんが言う。
「(…やっぱり恋バナか)」
私は、はぁ、とため息をついた。
別にこの手の話が苦手なわけではないけれど、私自身、そういうものに疎いのだから、自らその話をすることはまずない。
「それでも無理だって。なんせ華澄ちゃんはミスコングランプリの”高嶺の華”なんだから」
え?私の話?
「美人だし、頭もいいし、仕事もできるなんて凄いよね」
続けてあっちゃんが言った。
「あーん。主将と従兄妹ってだけでも羨ましいのに、赤司様の彼女候補とか羨ましすぎる!」
みっちゃんが言ったその言葉に私は、アホくさ、と小さく呟いた。
修ちゃんと従兄妹が羨ましいとかないないない。できることなら変わってあげてもいいくらいだわ。
さらには征十郎の彼女候補?馬鹿げてる。というよりサラッと流したけど、赤司『様』って何。
とはいってもこのままだと埒が明かない。
「さっちゃん、終わりそう?こっちはもう戸締りだけなんだけど」
今の話は聞いてないフリをして、私は体育館の入り口から顔を出し、さっちゃんに尋ねた。
「う、うん。もう終わるから」
「手伝うわ」
それから四人で残った仕事を終わらせて、戸締りをし、鍵はみっちゃんが返してくれるとのことだったので、私たちはそれぞれ帰路に着いた。
一方、この時。例の三軍体育館では”光”と”影”の出会いが果たされていた。