第20章 馬鹿っ!
さあ、やってまいりました。
帝光中バスケ部恒例の夏合宿。
「紫っち!起きて!海っスよ、海!」
「んなモン見ればわかるからー。てか黄瀬ちん、うるさー」
移動中のバスの中、黄瀬は海が見えるなり窓から身を乗り出してはしゃぎ出す。
隣に座るあっくんはそんな彼を鬱陶しそうに見るも、その顔は、遊びたくてうずうずした子どもそのもの。
「黄瀬、身を乗り出すな。危ないだろう」
「すんませーん」
征十郎が注意するが、全く反省の色が見られない返事をする。
それほど楽しみにしているのだろう。
「さつき、華澄。ちゃんと水着は持って来たんだろな?」
私たちマネージャーの座る席の後ろでテツ君と座っていた大ちゃんが、前に乗り出して私たちに問いかける。
「当たり前じゃん!テツ君に見せたくてわざわざカスミンと買いに行ったんだから!」
「え」
さっちゃんの答えにテツ君は読んでいた本から視線を外して、困惑の声を上げた。
「だとよ、テツ!良かったじゃねーか」
「はあ…」
この思考回路が少々ずれた幼馴染コンビはどうにかならないのか。