第18章 形無しだわ
征十郎が?私が夏祭りに誘ったところで喜ぶ?
そんなわけはないと思うのだけど…。
「偶にはさ、”高嶺の華”を振舞わずに、ただの恋する乙女になってもいいんじゃない?華澄ちゃんだって一人の女の子なんだし」
「……」
あっちゃんの言う通りかもしれない。
こうして周りの幻想に付き合って”高嶺の華”を演じているが、今や私だってただの恋する乙女である。
「…努力してみるわ」
「何話してるのー?」
「何でもなーい」
私とあっちゃんがコソコソと話していることに気づいた久美ちゃんが問いかけるも、あっちゃんは秘密にしてくれた。
と、その時。校内放送が耳に入ってきた。
『…以上でバスケ部紹介を終わります。ありがとうございました』
「今の…黒子君の声?」
あっちゃんはふと聞こえてきた放送に首を傾げる。
「ああ、そういえば昨日テツ君が言ってたわね。なんでも中体連が始まる前に、各部で部活紹介をしてほしいって放送部に頼まれたらしいわ。ま、うちはもう始まってるのだけどね」
昨日、少し練習に遅れてきたテツ君に理由を尋ねると、そんなことを言っていた。
なんてことを思い出しながら私はイチゴオレを飲んでいた。