第10章 あくまで反対だからね
「華澄は知っていたのか」
修ちゃんが去った後、征十郎が私の方を見て尋ねる。
「ええ…。そりゃ従兄妹だし…」
「…そうか」
すると征十郎は、いまだ涙のひかない私をゆっくり抱きしめた。
「こうしてるから、泣くといいよ」
練習後の征十郎は少し汗臭かったけど、嫌いではない、寧ろ安心するこの匂いと彼の優しい言葉に私は更に涙がこぼれる。
「私…、修ちゃんに代わって、きちんと征十郎を支えられるように。…支えられるように、頑張る、から…」
「うん。ありがとう」
修ちゃんを支えてあげることはできなかった。
結局彼に辛い決断をさせてしまった。
だから今度は、今度こそは征十郎が少しでも辛い決断を迫られないでいいように、私が征十郎を支えたい。
そう思ったのだ。