【恋の乱】才蔵さんと過ごす四季【章により裏R18あり】
第7章 夏〜甘い時の終り〜
ゆったりとした時が流れ、才蔵さんに寄り添ったている。
頭や肩や腕を撫でられるのが心地いいなあ、と思って目を閉じていた。
しかし私は急になにか『ぞわぞわ』と心が冷える気配を感じた。
才蔵さんの手もピタっと止まった。
私は不審に思い才蔵さんの顔を仰ぎ見た。
すると才蔵さんはまっすぐ前を見据えている。
眉間に皺が寄り、かなり厳しい顔つきになっている。
なぜ?と思ってその視線の先を追うと…。
一羽のカラスが庭石にとまっている。
…あ、あれは、時々才蔵さんと一緒にいるカラス?
里からの何か合図?
「さ、才蔵さん?」
私は、思わず声をかけた。
「気にしなくていい」
感情のこもらない声。
「でも、あのカラスって…」
「気にしなくていいと言ってる!」
いつもの飄々とした口調とは違い、低い声で冷たく言い捨てられビクッと体を震わせてしまう。
才蔵さんはそんな私の反応に我に返ったのか急に声音が柔らかくなった。
「ごめん…つい…」
才蔵さんに両手で抱きしめられる。
でも今までのくつろいだ雰囲気はなくなり、才蔵さんの緊張感が伝わってくる。
あのカラスが何の合図なのかは私にはわからない。
でも里の命は絶対だということは私でも知っている。
以前に才蔵さんが里の命を無視し続けた事があったらしいけど。
かなり命をかけた危うい行動だった事はあとで聞いた。
「…行ってください…」
抱きしめられて胸に頬を預けたままつぶやく。
「お前との時間はあとまだ1日ある」
才蔵さんの声が胸に当てた耳に伝わって響く。
「でも…」
「あんなの無視すればいい」
「ダメです。」
「…」
「ただ、またここに戻ってきてください。」
「…」