【恋の乱】才蔵さんと過ごす四季【章により裏R18あり】
第7章 夏〜甘い時の終り〜
台所で昼餉の準備をしていた。
野菜を刻んでいた時に、不意に後ろから抱きしめられる。
「きゃっ」
「俺がやるって言ったのに…」
「わっ、才蔵さん。びっくりした…。」
才蔵さんが近づいて来た事に全く気づかなかった。
今は料理をしていた事もあり、完全に気配がわからなかった。
「お前さんは、休んでて。」
抱きしめられたまま、才蔵さんが耳元で囁く。
私はくすぐったさに耐えながら、
「だって、才蔵さんも疲れてるみたいだったし」
「俺の事はいいから…。ねっ?」
後ろから抱きつかれたまま、頭や耳、首すじに口付けを落とされる。
やん、またゾクゾクしてきた。
「さ、才蔵さん?私、包丁持ってるし、危ないですから…。離してください。」
「やだ」
だよね。そう簡単にいう事聞くわけないよね。
「…じゃ、二人で作りませんか?その方が早いし。」
まだずっと口付けをあちこちに落としている。
「…」
「…もう少しなんです。
今、お素麺を茹でようとしてたんです。
ネギや青紫蘇や茗荷とかの薬味を刻んでて。
おつゆも作ってます。
あ、才蔵さん、おつゆを味見して仕上げてもらえませんか?」
そう言うと口付けが止まった。
「…わかった」
やっと才蔵さんが私から離れてくれた。
才蔵さんは、おつゆの鍋の方に行き、慣れた手つきでおたまから小皿におつゆをすくい、味見をしてくれる。
あ、こんななんでもない仕草も絵になるような…。
「ん、美味しいよ。」
「ああ、良かったです。」
私は薬味を刻み終えた。
「お湯が沸きましたね。お素麺を茹でましょう」
そんなやりとりをしつつ、二人で楽しくご飯の準備をした。