第2章 兄 *Kou
俺は放課後、群がる女の子達から逃れ、裏庭に来ていた
そこには焼却炉と花壇があった
「あっ、これって....」
花壇をよく見るとそこは花ではなく、人参や大根などの野菜が植えてあった
この犯人をコウは知っていた
コウの兄弟であるユーマが以前、ここで凄いのが出来たと喜んでいた
きっと、彼の仕業だろう
そんな事を思いながら俺は正面の玄関に出ようと角を曲がろうとする....が....
「あの....その....」
話し声が聞こえ、立ち止まる
顔だけちょこんと出し、様子を見ると、そこには見慣れた人物が立っていた
(あれ....ルキくん?)
彼の隣には1人の女子生徒が緊張した面持ちで立っている
すこし、頬を赤くした彼女はきっと彼に告白をしようとしているのだろう
コウはこのまま横を通るのもないなと思い、話が終わるのを待つ
ふと、女の隣のルキの顔を見る
彼は女の子とは対象的に、いつものように平然とそこに立っている
整った体型に大人っぽい顔立ち....
男でも認めるのだから彼に見惚れる者も多いだろう
コウ自身も、取り巻きの女達から彼の話題を出され、自慢気に兄の事を話していた
そんな彼はやはり、こうゆう機会は多い様で、呼ばれているのをよく見る
もう一度、2人を見ると、話は終わったようで女が1人立ち去る
きっと、ルキは断ったのだろう
彼女の目は少し潤んでいた
彼はいつもこうだ
女を作らないわけじゃない
しかし、どこか割り切ったように傍に置いていた
そう、"駒"みたいに....
けれど、それについて俺はどうこう言える立場じゃない
所詮、ヴァンパイアと人間....
俺達は人を餌にする魔物....
血を吸い、記憶を消して、別れる
こんな事俺だってよくする
けど、彼はなんだか違う....
これが、孤高というものなのだろうか
コウはルキが見ている世界を見てみたい、そう思った