第2章 2話
男が私の首元をじっと睨むように見たかと思うと口を大きく開けて一度かぶりついた場所にもう一度、さっきより深くかぶりついた。
「いやあああいたいいたいやだあああああああ」
男は私の叫びを無視してそこを凝視していた。
「まさかとは思っていたが、あの噂が本当だったとは。来て正解だったな。」
男は一旦私から体を離すと部屋の壁にかかっていた狩り用に使う縄を手に取り、それを私の体に巻きつけた。
「いいのが手に入った。…これでようやく俺も永遠に空腹に悩まされることはなくなりそうだ。」
私は痛みで意識が朦朧とし始めぼうっとしていた。
ふわっと浮いた自分の体もうまくバランスが保てず男に抵抗することさえままならなかった。
男の肩に担がれた自分はまるで猟銃で撃たれた鹿になんとなく似てる気がした。
「これから宜しくね、子猫ちゃん」
血濡れた口が私の頬にそっと触れ、腰を大きな手で撫でられた。
男が扉を開け、外に一歩踏み出した。
「おっさん、それ悪いけど置いてって貰えないスか?」
まだ声変わりに差し掛かって間もない年頃の男の子だろう、アルトの声が心地よく私の耳を通し使い物にならない脳を震わせた。