第1章 1話
普通だった。
そう、一般的な家庭となんら変わらない生活を送ってたし家族もいた。
家だって決して大きくはないけれど4人で住むには十分の広さがあってそれで自分の部屋があって…
その普通は、昨日まではの話。
確か自室で毛布に包まって目を閉じたはずだ。
なのに何故、私は直立不動で中世のヨーロッパみたいな住宅街の裏路地にいるのだろう。
寂れた古いレンガの家々は日本とは思えず行く当てもわからない。
ただでさえ、そんな状況なのに自体はもっと深刻だった。
鉄のような香りが全身からする。
自分の身体をそっと見れば白いワンピースに刺繍と赤のエプロンが可愛い服だった。
だけど、自分の腕から胸にかけて不自然に赤い色がべたつくように着いていた。
何かなんて考えずともわかっていた。
自分が何処か怪我をしていたわけではないのにこんなに血が着いているのは不自然だったが、敢えて深く考えず路地から灯りのする表に出て行った。