第1章 はちみつが甘いから
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(ぎゃあああああああああ犯されるぅぅぅぅぅぅぅぅ)
男性の大きな肩に乗せられてどこかに運ばれていく様を見ながら、私は涙目になってジタバタともがいてみるが男性の表情が変わることはない。
前を歩いていたもうひとりの声のデカい男性が、小屋の前で足を止める。
その小屋を一目見て察した。
きっとここがこの人たちの住処で、私はいまからこの人たちに無惨に体をいたぶられて山奥に捨てられるのだと!
絶対そう!雰囲気的にそう!結局ここがどこなのかわからないし、本当にまずい。
「降ろし」
前の男性が私を担ぐ男性に告げると、すっと地面に降ろされたのでどうにかして逃げる機会を探ろうと目線を向こうに広がる山道へと動かす。
すると、そんな私の心情を見透かすようにガタイのいい男性の方がゆっくりと口を開いた。
「あそこは熊が出んで」
初めて聞いたその男性の声は、思ったより高くてなんというか心を見透かされたことよりもその声とガタイのよさとのギャップについ目を丸くしてしまった。
すると、
それを見ていた声のデカい方の男性が、「ぎゃはははは」と腹を抱えて大笑いするものだから、びっくりしてそちらを見ると男性と目が合い笑いの合間に口を開く。
「そいつ声の高さに悩んでんよ!おもろいわあ」
「……死ね」
ああ、なるほど。
だから彼の声のギャップに驚いた私を見て大笑いしたのか。
馬鹿にされている彼は、まだ笑う男性に向かって鋭い眼光を向けている。
なんだかんだ仲がいいことが伝わるその2人のやり取りに、さっきまでどうやって逃げようかと考えていたことも忘れて同じように頬を緩めてしまう。
まだ確証はないけど、この2人は多分私をどうこうするためにここまで連れて来たわけではなさそうだ。
こんなことで信用してしまうなんて、自分でもチョロいとは思うけど、知らない地で初めて少し心が休まった気がする。
「笑ったわー…そやさっきの、ここはどこかって質問」
「あっはい!」
目に溜まった涙を拭いながら、男性がおもむろに口を開いた。
今度こそ答えてもらえる…!
「オレたちの手伝いしてくれたら教えたる」
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