第2章 垢をください
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途中休憩をとりながらなんとか阿古さんが住む家についた私は、従者の人に手を取ってもらいゆっくりと駕籠の中から降りた。
これ、本当にキツイ。
何がキツイかっていうと揺れる。思ってた以上に。
優雅に景色を眺めつつ、お姫様気分を味わえると思っていたんだけど(歩かなくていいし)普通に足で歩いた方がましだと思った。
もう乗らない、絶対に。
はあはあと青ざめながら駕籠を後にし、前に目をやると気分の悪さもどこかに吹き飛ぶくらい立派な屋敷が建っていた。
あの、なんだろう上手く言えないんだけど、修学旅行の時京都で見た神社の神主さんが住む家みたいな…とにかく今まで生活してた小屋とは比べ物にならないくらい豪華だった。
玄関の前にはクソでかい松の木が立ってて、思わず「わ~」とその木を見上げる。
「鳥でもいましたか」
「…うん」
行きましょう、とイケメン従者に手を引かれ玄関の門をくぐり抜けると数人の女の人たちが玄関前でお出迎えをしてくれる。
あれだ…お金持ちの家の出迎え方だ…ドラマで見たことある。
お母さん、お父さんごめんね…こんな体験ひとりでしちゃって…次は2人も連れていってあげるからね。
心の中で2人に謝りつつ、手を引かれるまま屋敷の中に入る。
「!」
───────圧巻。
その二文字だけで、目の前の景色を言い表すには十分だった。
旅館だ、いやその辺の旅館より大きいかもしれない。
近所のスーパー銭湯よりは絶対デカい。
もしかして、阿古さん本当にどこかのご令嬢なんじゃ…。
まずいな、いくら顔がそっくりだといっても育った環境が違いすぎて対応出来ないぞこんなもん!
どうしよう…なんかもっとお嬢様みたいな喋り方した方がいい?ああ、阿古さんどんな話し口調だっけ…思い出せない。
ダラダラと冷や汗をかく私に気付いたイケメン従者くんが「どうされましたか!またご気分が…」と心配そうに私の頬に滴る汗を手ぬぐいで拭う。
すると、パタパタと誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえて私の緊張は一気にボルテージを上げる。
「阿古さん!」
まるで小鳥のように駆けてきたのは長身で細目がちなスラっとした美人な女性だった。
自分ではない自分の名前を呼ばれて思わず「は、はい!」と返事をしてしまう。
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