第7章 お久しぶりです月山さん。
「貴方に会いに来ました、月山さん。」
「っ...!」
月山さんの長い前髪から覗く眼が細められた。瞬間、僕は彼に抱き締められていた。壊れ物でも扱うようにそっと優しく、でもしっかりと...まるで、もう離さないとでも言うように。
「月山さんっ...あの、ここ外ですよっ...!」
彼の大学での立場を心配して声を掛けると月山さんは黙って首を振った。苦しそうな、詰まり詰まりの声が耳元で流れる。
「...カネキくん...どうして僕の所へ来てくれなかったんだい...君の事が心配で心配で...辛かった。もう、こんな気持ちは嫌だ...君を離したくない。」
「っ...!ごほんっ...とっ、取り敢えず、中に入れてください月山さん。」
珍しく真面目な態度に狼狽えてしまい、それを誤魔化す為に咳払いを一つして月山さんの胸を押した。彼は寂しげな顔をしたまま離れ、黙って僕の手を引いて家の中へ入った。
「...髪、綺麗だね。前の真っ黒のストレートも良かったが...今の真っ白の柔らかな髪もなかなかだ。」
立ち止まった月山さんはふふ、と微笑みながら僕の髪を撫でた。そのまま指が頬をなぞる。くすぐったくて微かに息が漏れた。