第17章 男女の契りは誰かに言いふらすことではない 〜懲りない男〜
「もー! 帰るわよ」
「あァ!? 俺ァはまだ、帰ェらねェぞ!」
男はカウンターの机にしがみ付く。
ーーここが穴場のバーで良かったと心の底から思う。こんな姿、他の人に見られていたら、知らないふりをしてこの男を置いて帰りかねない。
「ふふふ、お客様」
マスターはにこやかに笑いながら、銀時に何かの券を渡した。
「サービスで、こちらの割引券をお渡し致します。期間が迫っていますので、是非お早めにご利用ください」
「あ?」
割引券を見た銀時は目をキラキラと輝かせる。
「お前、いい奴だなァ!」
男は上機嫌でマスターの肩を叩いた。
「ちょ、ちょっと! 銀時!」
昏葉は急いで銀時を止める。
「いいですよ。ああ、それから……」
マスターは女の方を見た。
「昏葉様にはいい情報が」
彼はにこりと笑う。
「この前、仰っていたテロの件ですが……どうやら、数日後に広場で開かれるお祭りの時に行われるのではないかと風の噂で聞きました」
「お祭り?」
「はい」
彼は尚もニコニコと笑っている。
ーーこの男は一体、どこから情報を拾って来ているのだろうか。
「……わかったわ」
女はカウンターにお酒代と情報代を置いた。
「ああ、今回は情報代は結構ですよ」