第17章 男女の契りは誰かに言いふらすことではない 〜懲りない男〜
「え?」
女は目をパチパチと瞬きさせる。
「ついこの前、大金をいただきましたし、今日はお連れ様も連れて来てくださいましたから」
ーサービスです。
そう言って、マスターは面白いものでも見るかのように、女の隣にいる男を見て笑った。
「私と銀時はそんなんじゃ……」
マスターは無言でニコニコと目を細めて笑っている。ーーそんな言い訳は通用しないとでも言いたげだ。
女はため息をついた。
「銀時、帰るわよ。神楽ちゃんが心配して、お家で待ってるでしょ?」
「神楽? 神楽は、今日はお妙のとこに泊まってらァ」
「それが帰らない理由にはならないでしょ?」
嫌々と首を振っている銀時の腕を強制的に肩に掛けて立ち上がる。
「お邪魔したわ。また来るわね」
「はい、ありがとうございます。ああ、昏葉様」
「何?」
店から立ち去ろうとして店の扉の前へ向かうと、後ろからマスターに声を掛けられた。
「不倫をするのであれば、相手の奥様にバレないようにしてくださいね」
「……」
ーつまり、マスターはこの男と神楽が結婚しているということ、昏葉が既婚者の男と不倫をしているということ、銀時と昏葉が親密な関係であるということというとんでもない勘違いを3つもしているのだ。