第13章 コスプレするなら心まで飾れ 〜荷物の重さ〜
止めに入る女の横で、髪の長い男は腕組みをしている。銀時はその言葉を聞かず、縁側へと出た。
「『人の一生は重き荷を負うて、遠き道を往くが如し』」
「……」
(その言葉は……)
「昔なァ、徳川田信秀というおっさんが言っていた言葉でな……」
「誰だ、そのミックス大名! 家康公だ! 家康公!」
あまりにも適当なことを言う銀時に桂が思わずツッコミを入れる。そのツッコミを聞いてか聞かずか、男はそのまま続ける。
「最初に聞いた時は何を辛気臭ェことをなんて思ったが……なかなかどうして、年寄りの言うことは馬鹿にできねェな……」
「……」
ー彼がこんな話をする時は決まって……。
「荷物ってんじゃねーが、誰でも両手に大事に何かを抱えてるもんだ。だが、かついでる時にゃ気づきやしねー」
ーー思い浮かぶのは攘夷戦争の時に、共に肩を組んで戦うことを誓った仲間たち。
「その重さに気づくのは全部手元からすべり落ちた時だ。もう、こんなもん持たねェと何度思ったかしれねェ」
ーー戦場で雨が降り続ける。白い戦闘服を身に纏った人物が天を仰いでいる。足元には肩を組んでいた仲間たちの死体が広がっている。
「……」
(銀時……)
ー戦争の度に失っていく仲間たち。戦っても戦っても、手元には何も残らず失うことばかりだった。
「なのに……」