第8章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜交わる想い〜
「し、仕方ないでしょ!」
女は必死に銀時から離れようとするが、敵の刀すら動かせないようにできる銀時の力に敵うはずもなく、抵抗すらできないでいる。
「……昏葉」
「ん!」
昏葉の耳元で男の普段よりも少し低くした甘い声が囁かれる。
「俺の……女になれよ」
「だ、ダメ!」
(それだけは……)
「……」
昏葉は必死に抵抗した。抵抗にはなっていないが、心だけは抵抗をした。ーーどうしても、心だけは……彼に捧げることができないのだ。
「……そんなに……俺の女になるのが嫌なのか?」
銀時は悲しそうな顔をした。
「そ、そういう意味じゃなくて……」
「じゃァ……どーいう意味だよ」
「……」
昏葉は黙り込んでしまった。ーー銀時の女になるのが嫌なわけではない。だが、なれない理由があるのだ。
(こんなこと……銀に言えるわけない……)
ーまだ、私が……。
昏葉は顔を背けた。
「……」
昏葉が答えずにいるのを見て、男はため息をついた。
「昏葉……いい加減、諦めろよ」
「……え……」
昏葉はその言葉を聞いて、やっと銀時を見つめた。
「……もう、高杉を追いかけるのはやめろって言ってんだよ」
「!?」
女は驚いた顔を目の前にいる男に向けた。