第7章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜見上げた満月〜
銀時がお風呂から出て来た時、女はソファの上にはいなかった。
「……寝たか」
ふーと息を吐き出して、銀時はタオルで天パの頭を拭きながら窓の外に目を向けた。
「高杉……」
ーお前は……一体、この世界で何がしたいんだ。
目を細めて満月を見ていると、ふと、外から人の気配がした。
「……」
銀時は立ち上がって、玄関を開けた。すると……。
「……銀」
「……お前」
そこには、煙管をくゆらせている昏葉が立っていた。
「……お前、何してんだ? 風邪引くだろ」
「大丈夫よ。髪の毛はちゃんと拭いたわ」
ふーと色っぽく、息を吹き出しながら目の前の男を見つめた。
「……少し、月を見ていたくてね」
女は月を振り返った。どこも欠けていない満月が歌舞伎町の空に架かっている。
「……あいつも、同じ月を見ているのかなって」
「……」
(また、あいつかよ……)
「そんなにあいつのことが気になるのか?」
「……あいつのいる場所は気になるわね」
月を見上げたまま、口だけが動いている。
「あいつの場所がわかったら、真っ先に会いに行って……一発は殴らないと気が済まないわ」
「……」
銀時は横目で昏葉を見ている。
「……あいつのことが好きだからとかじゃなくてか?」
「違う」
女はすぐに否定した。
「あいつに惚れてるとかじゃない。別にあいつじゃなくても、銀時や桂だったとしても……私は殴りに行く」