第4章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜紅の花が咲く時〜
昏葉はしれっとした様子で答えた。
「ほら、あいつもああ言ってるぜ? だから、ここはおかえり願……」
「そういう訳にはいかねェでさァ」
そこに、真選組1番隊隊長の沖田総悟が首を挟んだ。
「そこの女にはついさっき、歌舞伎町に入るゲートを少し行ったところで数人の男を斬り殺した疑いがかけられてるんでさァ」
「斬り殺しただ?」
「そうでさァ」
沖田は女の方を見た。
「幸い、斬られた奴らは警察が追っていた連続強姦事件の容疑者たちで、歌舞伎町に初めて来た女たちをたぶらかして強姦してるような奴らだったからいいんですけど、殺人事件があったとなると警察って立場上、見逃すわけにもいかねェもんで」
「そういうことだ」
土方はタバコに火を付けてふーと息を吹くと、昏葉を見た。
「目撃者もいる。傘帽子をかぶっていて、黒くて丈の短い着物を着て、腰に真剣を携えている女が男たちを斬ったと周りで見ていた人たちが言っていた。それに……」
もう1度、タバコの煙と共に息を吹き出してから土方は睨んだ。
「……その女が……万事屋に入ってくところを見た人もいる」
土方は懐から手錠を取り出して、ソファに座っている昏葉に近付いた。