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短編集《 黒子のバスケ 》

第1章 我慢は体にも頭にも良くないよ/紫原敦


お菓子禁止令、7日目。



「やっと…1週間…」



紫原はあれからも何とかどうにか頑張っている。
が、クラスではそれを見かねた女子が時々あげようとし、見張り役の黄瀬が止めに入り寸止めされるので紫原の精神は荒れ狂っている。



「頑張ってるね敦君」
「でももーダメかも…」
「あと1週間スね」



もはや泣き叫ぶ気力も無い紫原。
今日は部活が休みなので早く帰れるが、疲れ切っている紫原は机に突っ伏したまま起きない。



「オレ先帰るっスね。2人も早く帰るんスよー」
「うん、じゃあね黄瀬君」
「うーー」



紫原は返事もまともに出来なくなっていた。
いや、正確にはしたくない、だ。
口が甘いものを求めていて仕方がないのだ。



「敦君、帰ろ?」
「………うん…」



まるで小さい子供だ。
中学2年生なんてもちろんまだまだ子供だが、そんなレベルではない。
駄々をこねるワガママなお子様だ。
そんな紫原に最後まで構うのは以外いるのだろうか。



「ねぇ敦君」
「んー?」
「敦君はいい子?」
「え?」
「秘密って言われたことは守れるいい子?」
「…うん、ちんの秘密なら守る」



まるで小さな子供をあやす姉の様な口調だ。
しかしそれを気にもならない紫原。
さすがは末っ子というのか、それほど精神的に参っているのか、はたまただからこそ気にしないのか。



「じゃあ教えてあげる。あのね、中央広場の所に新しいクレープ屋さんが出来たんだけど」
「えっ」
「オープン割引で、友達割引っていうのがあるらしいんだよね」
「……」



紫原の唾を飲み込む音が大きく鳴った。



「私今、すっっごくクレープ食べたい気分なんだぁ」
「しょ、しょうがないなぁ〜…」
「ふふっ、行こ!」



さっきまでの無気力なお子様はどこかへ消え、代わりに新しいおもちゃを見つけたかの様にキラキラと目を輝かせるお子様がいた。
どちらにせよ、お子様である。
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