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短編集《 黒子のバスケ 》

第3章 tear and smile/黒子テツヤ


「さん」
「ん?」



だいぶボクには慣れてきた彼女に、ボクはある提案をした。
デートをしようと。
ボクと、彼女の思い出の場所で。




《 smile 》




デートの日は部活が午前練だった土曜日。
部活終了後、すぐに彼女の家に迎えに行き出掛けた。

まずは二人が出会った、図書館。



「君に、どうしても勧めたい本があるんです。きっと気に入ると思いますよ」
「本かぁ…。私、小説って結構好きだな」
「たとえば…昔を背景とした恋愛ものや青春ものですよね?」
「うん。そんなことも話してたんだぁ…」



最近彼女は、以前の彼女について話しても悲しい顔をすることが減った。
少しだけ嬉しそうな顔をする。
多分そのことに本人は気づいていないのだろうけど、もしかしたら徐々に記憶が戻りつつあるのかもしれない。
ボクはそれを信じて思い出を語る。



「ボクと君はここで出会いました。ボクは青春ものも好きで、たまにここのコーナーを見てたんです。そしたら君もここにいて、ボクが手に取った本のシリーズを私も好きだと声を掛けてきたんです」
「へぇ…」
「最初はボクの存在に気づいたことにビックリしたんですけど、本が好きだと言った君の笑顔が素敵だったので…」



ここまで言ってハッとした。
ボクは今、彼女の恋人でなく、友達として接しているのだった。
あまり余計なことを言うと彼女を苦しめてしまうかもしれない。



「ねぇ、そのシリーズってもしかしてこれ?」
「え…あ、はい。それです」
「やっぱり…。なんとなくそんな気がした」



彼女は特に気に留める事も無く、話を続けた。少し複雑な気持ちだった。





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