第10章 優しさに甘えて…
急に声をかけられて、思わず飛び退いてしまった。
「はい、これ。
皆の分のマイクやで」
「あ、すみません。
本来なら私の仕事なのに…」
「ええって、そんなん。
僕元々今日オフの予定やったから、時間に余裕があんねん」
「オフだったんですか?」
「おん、まぁ」
「花音ちゃん、むっちゃ驚いてたなぁ。
ぎゃっ、って」
ケラケラ笑っている大倉さん。
「そこは忘れてくださいよ。
大倉さんも、今日オフだったんですか?」
「おん。
ヤスと遊ぶ約束しててん」
「え、そうなんですか?」
「おん。
あ、はいこれあげる。
美味しいで?」
「すみません、ありがとうございます」
大倉さんから、缶ジュースを受け取る。
「なんか今日謝ってばっかやない?大丈夫なん?」
「大丈夫ですよ?」
「花音ちゃんって、このあと空いてる?
空いてるなら、ギターの練習せぇへん?」
「え、でも…大倉さんと約束してるんじゃ」