第9章 H27.6.10. 岩泉一
そう嬉しそうに箱からそれを取り出した。
…やはり予想は的中した。
「バースデーケーキだよー!」
「見りゃわかるよ」
「ふふ!どうよ?」
「…これ、手作り?」
「まぁね~」
さすがに店に並ぶほど、とまではいかないが、それでも十分うまそうだ。
今までお菓子を作れるかどうかもわからなかったが、普通にめちゃくちゃ上手くないか?
初めて食べるのがバースデーケーキっていうのも何か良い。
なんせ、これはオレのために作られたものだからだ。
「食って良いか?」
「もちろん!はい、フォーク」
「おう…準備良いな」
「任せて!」
一々可愛いなとか、やっぱりケーキ美味いとか、何気ないことが全部幸せだ。
「サンキュな、」
「えっ、あ、ううん…」
もうそろそろ言ってもいいだろうか。
これ以上どう我慢すりゃいいのかわからない。
それほどまでにオレはコイツに惚れ込んでいるらしい。
「なぁ」「ねぇ岩ちゃん」
…被った。
「…あー、先言えよ」
「え、でも…」
「いーから」
「うん…」
勢いを失くしてしまった。
もう言える気がしない。
やっぱりタイミングは図りすぎるとダメだな…。
「岩ちゃんあのね、」
「んー?」
「私、岩ちゃんが好き」
「んー…………は?!」
「好き」
今、なんつった?
言う勢いを失くしたと落ち込みすぎて耳がおかしくなったか。
だけど横を見るといつもの笑顔とは違って真剣な顔つきだ。
「マジで…?」
「マジで」
「オレ?」
「オレ」
耳まで真っ赤にしてオレを見上げる。
そんな顔されたらもう黙っていられるわけがない。
「オレも好きだ」
オレから言おうと決めてたのに。
あの時譲らなきゃよかった。
だけど結果としては両思い、ってことだよな。
「…両思いだ」
「みたいだな」
「やったー!嬉しい!」
これからコイツの危なっかしさも無邪気にはしゃぐ可愛らしさも、それからオレのために動く姿も、全部一人占めしてやろう。
この小さな手を引くのは、ただ一人オレだけだ。
「じゃ、帰るか」
「うん!」
2015.06.10.
Happy Birthday to Hajime..