第1章 H27.8.31. 青峰大輝
君はいつも一生懸命でした。
誰よりもバスケが大好きで、誰よりも一生懸命練習していて、誰よりも強かった。
その時の君の笑顔は眩しかった。
そんな君に僕は救われた。
そしてそれは、彼女も、同じだった。
だけど、その笑顔が君から消えた時、ーー
「青峰君!どこ行くの?!」
「あー?屋上ー」
「また昼寝?!」
桐皇学園高校、夏休みの登校日。
バスケ部のエースとマネージャーである青峰と桃井は、いつもの会話…とも、口喧嘩…とも言えないやり取りをしていた。
というのも、青峰はいつも通りであって、桃井は怒っているからだ。
つまりは桃井の一方通行とも言える。
「そーそー。今丁度いい時間なんだよ。じゃあな」
「待 ち な さ い」
「ぐえっ!?おいっ、ネクタイ引っ張んな!」
「青峰君が待たないからでしょう?!」
学校でホームルームなどが行われたのは午前中。
その後、昼食を食べた青峰は相変わらずこの調子である。
「ったく、もっと止め方あんだろーが」
「うるさいなぁ。じゃあ大人しく来てよねー」
「あん?どこにだよ。今日は部活休みのはずだろ」
そう。今日は部活が休みなのだ。
というのも、今吉ら3年が進路の関係で部活に出られないというのと、若松ら2年の中で数人が2学期に控えた体育祭のことで会議があり、部活に出られないとのことらしい。
残ったメンバーではまともに練習が行えないため、監督は今日の練習をオフにしたのだ。
「ちょっとねー。もちろん来るでしょ?」
「俺は眠ぃんだよ」
「行ったら目が覚めるから!ね!」
「あっ、おい!わかったから引っ張んな!」
そして青峰は結局昼寝をせぬまま、桃井に連れられて学校を後にした。
「おいさつき、どこ行くんだよ」
「いいからいいから!」
「せめて行き先くらい教えろって!」
「そのうちわかるよ~」
そう言う桃井は機嫌が良さそうだ。
これ以上聞いても無駄か、と察した青峰はそれ以上問いただすことなく黙って彼女に付いて行くのだった。