第6章 お兄ちゃんオーバーケア②(轟 焦凍)
▼ 昼 〜超お茶子的解釈〜
ウチのクラスの轟くんは、地上から見た蟻の巣みたいにミステリアス。ちょっと掘り返してみたくなる。
「轟くん、今日もお蕎麦なんやね」
学食で話しかけると、轟くんは「?」という顔をしてから、あぁ、と短く答えた。
「毎日、お蕎麦食べてるね」
「そう言われればそうだな」
「好きなん?」
「あぁ」
「・・・」
「・・・」
どうさ!この会話の広がらなさ!
自分の話もしないし、相手のことも尋ねない。
そんな人とは盛り上がるの難しいよね。
無言が続いていたら、カツカレーを持ったデクくんがやってきた。
「麗日さん、隣座ってもいい?」
椅子を引きながら、デクくんはウチらの食べてるものを見て感想を漏らす。
「轟くんは、また蕎麦なんだね」
「? あぁ」
「好きなの?」
「あぁ」
ほら、完全に同じ流れや。
轟くんのことをよく知りたいと思うあまり、やってしまったパターンだこれは。
轟くんは、ひとりで学食へ行きひとりで食べているつもりらしいけど、ウチらはそうはさせまいと周りの空席に腰掛けることが多かった。ランチはみんなで食べた方が美味しいもんね!
お蕎麦から離れて、別の質問を投げてみようと思う。
「轟くんって、趣味とかあるん?」
「趣味?」
意外そうな表情を浮かべたものの、轟くんは即答した。
「鍛錬」
そうやなくて、もっとこう・・・趣味っぽいアクティビティってあるやん
「じゃあさ、」とデクくん。「昨日の休みは何して過ごした?」
「昨日か、」
短い逡巡の後、轟くんは教えてくれた。「服の毛玉取り」
「・・・質素やね」
案外、家庭的なタイプなんかな。轟くんがセーターのお手入れをしている姿を思い浮かべようとしたけれど、想像力が足りひんかった。
会話は盛り上がりに欠けるけど、でもウチは知ってるよ、轟くんはコンビニでお菓子買うときは、必ず二個ずつ買うってところ。きっとあれが轟くんなりのささやかな贅沢なんだ。
▲ そういう子でも有りです