第1章 偏屈者の行き着く先は(轟 焦凍)
うちのクラスの轟くん、と言えば、
『頭脳明晰・容姿端麗・運動神経ぶっちぎり』
なんて月並みな言葉で語れるほどのお手軽天才くんじゃない。
比較対象がいないくらいの、正真正銘の天賦の才の持ち主。
炎と氷を操る”個性”を持った、完全なるチート人間だ。
ビルを丸ごと凍らせてしまう程の強力な能力なんて、
まだまだ自分の個性が制御できない、僕・緑谷出久からしたら、
羨ましくてしょうがない。
轟くんは、どんなときでも冷静で、的確で、分析力があって、
おまけにルックスも良いときている。
男の僕でさえ、時おり見せる彼の大人びた表情にどきりとする。
つまり、轟くんに関してはかっこ悪いところがない。ひとつもない。
強いて欠点———欠点って言うほどでもないかもしれないけど———を、挙げるとするなら、そうだな。
まずは半冷半燃の能力からくる体温調節の必要性だけど、難しい話はここではやめよう。
性格的な欠点なら、やっぱりちょっぴり、態度が冷たいってところかな。
1人でいるのが好きなのか、僕らが誘ってもツンとした反応で返事もつれない。あと口も少し悪い。
あ、でもそんなところも、クールでカッコいいなぁって思うよ。僕は。
でも、もう少しだけ、みんなと仲良くしてもいいんじゃないかなぁ。って、僕は思っていたりする。