第2章 00:00 ”澤村大地”は完璧ではない。【全年齢】
何か言葉をかけたい。
でも何を言ったらいい?
こんなに近くにいるのにいつだって私は大地の役には立てないね。
「うまいね、これ。ありがとな!」
そう言って、あからさまに心配そうな顔をする私に笑顔を向けて頭をくしゃくしゃ撫でてくれる。
ほら、また。
そうやっていつも周りばっかり気にして、自分の事は後回しにするんだから。
「、寝ないのか?」
『大地と一緒に起きてるよ!』
「俺は大丈夫だからさ。無理しないで先に寝なさいって。」
『、、、大丈夫とかじゃなくて。大地がここにいるって事は、私が必要って事だと思うから。』
そう私が言い終えると、大地は少し笑って
「には敵わないな。」
と言って私を抱き寄せた。
左手でテレビのリモコンの赤い電源ボタンを器用に切ると、さっきまではあまり気にならなかった窓に打ち付ける雨音が突然生々しく部屋に鳴り出す。
私の狭いベッドに二人で並んで寝そべると、大地は逞しい腕を私の枕にしてくれて、包み込むようにして再び私を抱き寄せた。
「、、、ダメだな。試合の映像見てると、改善点と同じくらい後悔が増えちゃうんだよ。」
『後悔の残らない試合なんて、きっとないよ。みんな、そうだと思う。』
「まあな。、、、あの時ミスしたレシーブとかさ、夢に鮮明に出てきて、はっと目が醒める時があるんだ。情けないよな。」
私は大地の厚い胸板に顔を埋めて腕を彼の背中にまわして優しく撫でた。