第8章 21:06 ”黒尾鉄朗”は拾われる。【R18】
::::::: 黒尾鉄朗side :::::::
部活帰りに研磨と別れてからいつも寄るコンビニに最近変な女がいる。
この世の終わりみたいな顔したその人は着なれないスーツに身を包んで、ドリンクの冷蔵コーナーの前で、ぼーっとしたかと思うと、チューハイを2、3本カゴに入れて、その流れでスナックコーナーで即決か!と思う速さでコンソメ味のポテチを手に取り、レジに向かう。
なんて病的なルーチンなんだ、、、
彼女は俺が知る限り週1ペースでこの流れを繰り返してて、買い物した後に必ず店先でチューハイを空けて飲み始める。その姿を俺はジャンプを読みながらガラス越しに観察していた。
社会人、、、?
にしては若い、というかスーツに着られてんな。
就職活動か。
いやいや、人生大変ですねー。
6月の頭くらいになると、毎日雨は降ったりやんだりを繰り返し、空気は水分をまとって重たく、空はいつ見てもどんよりとしていた。
その日は珍しく朝から雨は降っていなくて、俺は傘を持たないで家を出た。そしたら案の定部活から帰っている途中に雨が強く降ってきて、俺はビニール傘を買うために例のコンビニに立ち寄った。
げっ!、、、傘売り切れかよ。
「あの、、、もしかして傘売り切れデスカ。」
「申し訳ございません。先程最後の一本が売れてしまって、、、。」
あ、、、そうですか、、、。
俺は諦めてコーヒーを買おうとドリンクコーナーの方を見ると、例の女がいつものように缶チューハイを選んでいた。
彼女を横目に冷蔵庫のドアを開けて缶コーヒーを取る。ちらりと顔を除くと、相変わらずの辛気臭い顔をしていた。
あれ、でも思ったより近くで見ると可愛いかも。
なんとなくそんな風に思った。
仕方なく店先で雨宿りをしながコーヒーを飲む。
外は肌寒くて、冷たい缶コーヒーは少し胃に染みた。
さみっ、、、、
俺は傘立ての横に座り込んで、店の前の道を通る傘を持ってる連中と、車を見送って、雨が弱まるのを待っていた。
「あの、傘ないんですか?」
突然の声にびっくりして声の方を向くと、傘立てを挟んで向こう側に、彼女は傘を広げて俺の方を見ていた。