第4章 10:00 ”及川徹”は雨をも制す。【全年齢】
『徹くん、私、、、ごめんね。直ぐに気付く事が出来なくて。』
「仕方ないよ!一緒にいたの小さい頃だけだったもん!でもね、俺の告白をちゃんは渋々でもOKしてくれて、今こうして一緒にいるんだからさ。」
『う、、、本当にごめんなさい。』
「ちゃん全然俺に興味なさそうだったよね~!さすがに傷ついたよあれは~。」
『ごめん。でもね、今は私、ちゃんと徹くんの事好きなの。確かにあの時はなんで私?って思ったけど、、、。
徹くんはモテるし、私と違って華やかだし、なんか苦手だった。でもね、バレー部で練習一生懸命やってる姿見て、凄く格好いいって思っちゃったの!サーブとか、セットアップとか、本当に凄くて、、。部活の後、体育館行った時に、みんなが帰った後に一人で練習している所見て、すごく、、、、好きになったの!
昔の思い出とかなくても、ちゃんと、好きなの!!』
彼女が涙目で必死になるもんだから、こっちまでなんだかドキドキしてきて、気恥ずかしくなってくる。
普段こんな風に自分の気持ちをぶつけたりしてこないちゃんがこんな事言うなんて、ホント、ずるいよね。
過去の思い出にとらわれる必要なんて、なかったんだろう。でもさ、俺は君との唯一の繋がりをずっと切らしたくなかったんだ。だからこそ、今この瞬間があるんだからね。
「ねぇ、ちゃん。」
『なに?』
「ずっと一緒にいようね?」
『うん、徹ちゃん。』
ふてぶてしいナポレオンフィッシュの青い身体。
底の方で静かに揺れるボンネットホーンシャーク。
マダラトビエイは白いおなかを見せながら壁伝いに泳ぐ。
「ちゃん。」
『ん?』
ちゅ、、、、、
右手と左手を繋いだ俺たちがあの時と同じように、
泳ぐ魚たちを背に笑って、水槽に映っていた。