第4章 10:00 ”及川徹”は雨をも制す。【全年齢】
B:side
ガタンゴトン、、、 ガタンゴトン、、、
あれから私たちは水族館を満喫した。
気持ち悪い形の深海魚を見せられて私が怒ったり、触れ合いコーナーでヒトデを徹くんに無理やり持たせたり、シロイルカが優雅に水中を泳いでいるのを見たり。
小さい頃の私たちも、きっとこんな風だったんだろうなと思った。
泣き虫だった徹ちゃんは、いつしか私よりも背が伸びて、繋いでいた手は私より二回り程大きくなっていて、、、。
それでも私たちは今も変わらずに一緒にいる。
私は帰りの電車に揺られながら、溢れ出す多幸感に包まれていた。
身体がなんだかポカポカしているのは、雨上がりの西日のせいだろうか。それとも隣で私にもたれて眠ってしまっている徹くんの体温のせいだろうか。
雨粒に濡れてキラキラと輝く夕方の景色を見送りながら、私は彼のさらりとした茶色い髪を優しく撫でた。
『好きだよ。徹くん。』
end.