第4章 10:00 ”及川徹”は雨をも制す。【全年齢】
A:side
『、、、、徹くん?』
彼女は酷く困惑した表情で俺の顔を見ていた。
決して困らせたいわけじゃない。だけど彼女への想いが募る程、あの日の約束が俺を苦しめていた。
ねぇ、ちゃん、
思い出してよ。
「子供の頃ね、この水族館で大好きだった女の子と約束したんだ。大きくなったら結婚しようねって!」
『、、、、徹くんは、まだその約束を守ってるの?』
「、、、、そうだね。今でも信じてるよ。」
彼女の方を横目で見ると、静かに涙がほろりと溢れて頬を伝っていた。俺は何も言えずにただ握った手を指を絡めて繋ぎ直してもう一度握りしめる。
君は約束を守ってくれる?
言葉に出して聞いてしまったら、何かが終わってしまいそうで怖くて何も言えなかった。
情けないよね。
だって、思い出して欲しくてわざわざここに連れてきたっていうのに、いざそうなると彼女が離れてしまった時の事ばかり考えてしまって身動きが取れなくなる。
今ちゃんは俺の彼女で、幼なじみという関係がなくたって一緒にいてくれてる。だったらもうこれ以上望む事なんて何もないんじゃないのか?
「ごっめーん!なんか変な事、
『あの!、、、
あの、、徹くん。私も、小さい頃この水族館に来たの。丁度この水槽の前で大好きだった子と約束したの。ずっと一緒にいようって、、、でも私すぐ引越ししちゃって、仙台に戻ってきたのは高校に入る時だった。
ねぇ、、、徹くんがあの時の、男の子なの?
泣き虫で、いつも私の後をついてきて、ずっと手を繋いでた。
あの子なの、、、、、、?』
「あはは。酷い言われようだねぇー!」
『徹くんは、、、、その、、、ずっと、私の事覚えてて、それで私に告白してくれたの?』
「そうだよ。」
2年のあの日、廊下ですれ違った瞬間に、すぐに君だってわかったんだ。
青葉城西はクラス数も多いし、あの日までちゃんに気付くことはなかったし、そもそも彼女が仙台に帰ってきている事だって知らなかった。
でもあの時、どうしてだろう。
自分でもよくわからないけど、君の通り過ぎてく横顔が、昔の記憶の中の姿にすぐに繋がって、間違えないって思ったんだ。